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『ゆっくり、いそげ』 [本]

『ゆっくり、いそげ』  影山知明 著

NHK総合で平日23時30分から放送している「NEWS WEB」をよく見ている。
鎌倉千秋キャスター(美人!)と、
曜日ごとに変わるネットナビゲーターのふたりで進行し、
その日のニュースについてコメントしたり、
ツイッターに流れる視聴者の声に耳を傾けたりする、
おやすみ前にふさわしいリラックスムードのニュース番組だ。
ネットナビゲーターのひとりとして登場するのが、
本書の著者、影山知明氏である。
「NEWS WEB」で見るまで知らなかったのだが、
有名なカフェの経営者なのだそうだ。
初めて入った小さな本屋で面陳されている本書を見て、思わず手に取った。
私が日頃心がけている言葉が、書名そのものだったから。

なぜ私が「ゆっくりいそげ」を心がけているかというと、
急ぐあまりに焦ると、本当にろくなことがないからだ。
かなりの確率で、大なり小なり何かしらの事故が起きる。
急ぐときこそゆったりかまえて、周りをきちんと見ることが大切だ。
仕事の時は、特に心がけている。

話がそれた。
影山氏が経営する会社の名前は、「フェスティナ・レンテ」。
イタリア語で「ゆっくりいそげ」を意味する。
「これからの経済や社会の基本指針を考えるときの
基本指針になるのではないかと思」うと、著者は言う。

本書で著者は、現代の社会システムに疑問を投げかけ、
よりよい社会実現の自説を唱えるとともに、
そのなかでのカフェの役割について考察する。
さらには、カフェからはじまるあらたな社会の仕組みを提唱する。

西国分寺の生家の土地で始めた「クルミドカフェ」は、
食べログで1位を獲得した超人気店なのだそうだ。
テーブルには「おひとつどうぞ」と書かれたクルミのかごが置いてある。
無料サービスだ。
そのクルミに象徴されるお店の姿勢が好まれているということなのだろう。

産地を限定したクルミの仕入れや手の込んだメニューづくり、
あるいはスタッフとのコミュニケーションなどを通して
著者は自らの経験から得たノウハウを解き明かす。
そのすべてに強調するのが、
受け手・贈り手双方にとって良い“give”の考え方である。
“take”の考え方では、相手から少しでも多くのものを得たいという心理が働く。
消費者の立場であれば、割引やポイント付与を享受したいという考え方だ。
対して“give”として考えると、
支払った料金以上のサービスを与えられたことに感謝を覚えるのだという。

本書で語られる言葉はほとんどが平易であるため
温和な印象を受けるが、時折とても力強い言葉が飛び込んでくる。

“人脈という言葉はまさにその象徴だ。人間関係を手段と捉えた言葉。ぼくが世界で一番嫌いな言葉でもある。”

“一人ひとりの人生は会社に先立ってある。会社は、一人ひとりのメンバーを「利用」するのではなく、それぞれの人生であり、そこに根をもった一つひとつの自発性を「支援」する。”

“それがお店であっても、建物であっても、自然であっても、本であっても、家具であっても、長い時間――特に人間の寿命をも超えるような長い時間――をその内に蓄積した物には、その種のものにしか身にまとえない力があるように思う。”

経済が飽和状態にあり、
この先、劇的な成長などまず見込めない(と私は思う)
現代の日本においては、おそらくこうした考え方が主流となってくるだろう。
いや、むしろそう考えなければ閉塞感はさらに増して、
いっそう生きづらくなるかもしれない。

カフェの経営状態を具体例としてひきつつ、しだいに
ゆたかな暮らしのありかたを問うてゆく。
仕事に対する考え方はもちろん、
これからの生き方についても考えさせられた。

西国分寺という街から発信されるあらたな
社会システムは、これからどう育っていくだろう。
周りを巻き込み、より多くの人の賛同を得て
わくわくするような大きなムーブメントへと
展開することになれば、世の中少しは
楽しいものになるのかもしれない。

ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~

ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~

  • 作者: 影山知明
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2015/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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