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「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」 [アート]


「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」
2011/10/22(土)~2012/1/29(日)
国立西洋美術館


ゴヤを初めてきちんと観たのは、18年も前のこと。
マドリッドのプラド美術館で〈サン・イシードロへの巡礼〉を観たとき、
その場から離れられなくなり、不覚にも泣いてしまった。
ダリとピカソとガウディを観に来たはずなのに、
もしかしたらこの絵を観るためにわざわざ来たんだろうか、
だれかがここへ連れてきたのだろうか、などと思ってしまった。
そのとき、同じタイミングでまわっていた
日本人ツアーを案内していたガイドの解説がまた興味深かった。
横耳に入ってきたその解説は、
「ゴヤの絵はどこを切り取っても、シーンとして成り立っている。
ゴヤはどの人物についてもきめ細かく表情を描いているから
一人ひとりのドラマが際立っているのだ」というようなことだった。
それを聴いて、なるほど、と腑に落ちたことも鮮明に記憶している。

それ以来、意識的に観るようになった
ゴヤの大々的な展覧会を見逃すわけにはいかなかった。
しかも、40年ぶりなのだそうだ。
本展は、プラド美術館所蔵の25点に
素描、版画、資料などを加えた123点を展示し、
ゴヤの芸術世界の全貌に迫る。


展示のサブタイトルにある通り、
ゴヤの作品に特徴的に表されるのは、「光と影」。
版画においてはその陰影表現が明らかだが、
つづく展示を観るにつれ、それが必ずしも
手法のみをさすのではないことに気づく。
表現方法としては、主役と脇役で、極端ともいえるほど
光の当て方を変えて描き分け、画面の物語性を際立たせるということだが、
ゴヤは生涯をかけ、人間が内にもつ陰陽の部分を描くことを貫いた。

カルロス4世の宮廷画家として活躍した経験も奏功したのだろう、
ゴヤは人間観察力が非常に長けていて、
モデルの表情ばかりか、
その人の本質、内面まできめ細かに映し出している。
肖像画しかり、「妄」シリーズしかり。
どんなに快活に見せていても、画面には
陰をあわせもつ人間の本質が仔細に描かれている。
それはひとえに、ゴヤの鋭い洞察力と豊かな表現力によるものだ。

モデルのおおらかで自信あふれる人柄までも思わせる
〈赤い礼服の国王カルロス4世〉、
ひじをついて画家を見つめ返す構図が斬新な
〈ガスパール・メルチョール・デ・ホベリャーノスの肖像〉などは
人間味あふれていて、とても魅力的。
また、なかなか面白かったのは
〈ロス・カプリーチョス〉作品群。
人間の愚行を風刺したという作品の数々には、主に動物が登場する。
なかでも、〈祖父の代までも〉と題された絵は、
ロバの絵が描かれた本をロバが眺めているという図。
そのすっとぼけた顔がかわいらしくて気に入った。
人間の滑稽さをデフォルメして動物に投影した作品群には、
画家のシニカルな面をみることができる。

そのほか、妙に気になったのが、
爬虫類の足をもち、背中にノートを携えて空を飛ぶ犬を描いた
〈空を飛ぶ犬 素描帖G 5番〉。
まったくどこからそんな発想がわくのか、
芸術家の考えることはよくわからない。
ちなみに、背中のノートには、
これから死ぬ人の名前が書かれているという。
ということは、いわゆる“デスノート犬”だ。
無表情に飛ぶ様が不気味で心惹かれる。

……というような作品はどちらかといえば特殊なもので、
今回の展示に多くみられたのは、戦争や貧困、生と死など
人生の暗部に焦点を当てた作品だ。
観るのもおぞましい場面であっても、眼をそらさずに見つめ、
細部までをも描きつくす。その執念たるや、すさまじい。

人間、不当な暴力、権威、戦争などの本質を見極めようと
視線を注ぎ、自身の表現を追求する作品に、
画家の皮肉に満ちた主張が執拗に込められている。

どちらかといえば暗めの作品が多く、
だからこそかえって画家の内面に触れたような気がする。
繰り返し取り上げている暴力や戦争への怒り、
人々の暮らしからにじむ悲哀、そのあたりが画家の主題であり、
もっとも伝えたかったことなのだろう。
身を削り、命を注いで生みだした
作品群から放たれるメッセージに圧倒された。

<「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」オフィシャルサイト>
http://www.goya2011.com/

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新年 [もろもろ]

IMG_1258.JPG

初日の出
……分厚い雲の向こうに。

2012年の幕開けを象徴するようにも思える。

新年。
個人的には、スタートというよりリセットという感じが強い。


皆さまには、健やかですてきな一年となりますように。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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生誕110年記念  荻須高徳展 [アート]


「OGUISS  生誕110年記念  荻須高徳展  ~憧れのパリ、煌めきのベネチア~
日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
2011年12月27日(火)~2012年1月16日(月)


荻須については、“パリに住んでた人”程度の知識しかなかった。
けれども、ポスターの絵がなんとなく気になって
観に行ったところ、これがビックリするほど良くて、
自分の好みにピッタリはまったのだ。
こういう出会いはとても楽しい。
何事も、自分の目で確かめなければわからない。


パリの街角を描いた画家として知られる荻須高徳の
生誕110年を記念した回顧展。
パリとベネチアを題材とした作品を中心に約90点を展示している。

第一印象は、“元気な人”だ。
絵具の盛りはたいへん気前がよく、
筆のタッチに勢いが感じられる。
生活感あふれるパリの街角を巧みな構図で
立体的に描き、奥行きを感じさせる。
画面に見えているものだけでなく、
そこから立ち上る人々の暮らしをも想像させるところがいい。
生命感にあふれていて迫力があり、
観ていると、なんとはなしに愉快な気分になる。

〈広告のある街角〉〈果物屋〉といった
風景画を観ると、毎日この道を通っていたのだろうか、
あるいは果物屋の主人と会話を交わしたりしたのだろうか、
など画家のプライベートまでも想像してしまう。
窓に洗濯物がはためいていたり、
八百屋や小間物屋、カフェ、屋並みからのぞくサクレ・クールなど、
パリの日常をさりげなく描いているにもかかわらず、
いずれもインパクトが強く、心に残る。
それはおそらく、画家がパリという街を知りつくし、さらには
愛情を持って眺めていたからではないだろうかと思える。

パリやベネチアという絵になる街を題材としたことも
奏功しただろうが、静物や人物を観ると、
作品の良さがそれだけではないことがよくわかる。
荻須というひとは、何を描いても筆が非常にスムーズ。
ひとことでいえば、巧いのだ。
物の形を的確にとらえ、それを活かすための構図を
まさにここしかないという一点で選び取っている。
何を描いても質が良いというのは、
画家にとって最大の魅力ではないだろうか。

今まであまり知らなかったこともあり、
一瞬も飽きることなく最後まで楽しめた。
百貨店でこれほどまでに充実した美術展を観ることができるとは。
なんともぜいたくな時代になったものだ、と思わざるを得ない。


<展覧会オフィシャルサイト>
http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/oguiss/

荻須高徳画文集―パリの街を愛し、生き、そして描いた

荻須高徳画文集―パリの街を愛し、生き、そして描いた

  • 作者: 荻須 高徳
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 大型本



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