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スガシカオ@さいたまスーパーアリーナ [音楽]


「スガフェス!~20年に一度のミラクルフェス~」
2017/5/6(土)
さいたまスーパーアリーナ

大型連休後半の土曜日は、さいたまスーパーアリーナへ。
初めて行ったときは遠いと思ったけれど、
さいきんではすっかり慣れた道だ。
今回は、スガシカオのデビュー20周年を記念するイベント。
主催者であるスガと交流のあるアーティストたちを中心に、
バラエティ豊かなアーティストたちが出演した。


13時スタートの一番手は怒髪天。
汗臭さと中年の悲哀が漂う演歌ロックは趣味じゃないけれど、嫌いでもない。
気軽に見るにはうってつけだ。
しかし、長丁場のイベントの悲しいところで、
最初のステージはまだ客がまばら。
少々さみしい観客を相手にテンションも今一つ上がらない様子だった。
終盤で、主催のスガを呼び込んで、「夜空ノムコウ」を合唱。
「さいたまスーパーアリーナで、スガシカオとカラオケをしています」との
トークに会場が沸く。
ゆるっとほんわり、会場を温めてくれた。

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  • 出版社/メーカー: インペリアルレコード
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2番目はTHE BACK HORN。
ギターの栄純はサマソニのステージで
スガのバンドメンバーだったからよく知っているが、それ以外はまったくわからず。
こういう音楽だったのか!と初めて知った次第。むむ、微妙だな。

あなたが待ってる (初回限定盤)

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3番目、UNISON SQUARE GARDENも特に関心なかったので、
休憩タイムと称して会場を出てビールを補給。
お、そういえば鹿野淳のDJも観たぞ。
相変わらず熱い男だな。やり手のオーガナイザーだが、
そこらにいる兄ちゃんと変わらないところがある意味魅力的なんだ。

その後になぜか、ふなっしーが登場。
スガと交流はなく、なぜ出演しているのかはわからんが、
生ふなっしー、思った以上に動きが激しくて笑えた。
会場のテンションもおかしな感じに上がっていて面白い。

そしてRADIO FISH。
じつは好きなんだよね。
踊る人は基本的に好きだし、確信犯的なパフォーマンスが面白い。
中田あっちゃんは、スガとはお友達だそうだ。
パフォーマンスの完成度が高く、さすがテレビの人たちという感じでした。

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で、なぜか(笑)稲川淳二の怪談。
たしかに面白いんだけど、怪談はだだっぴろい場所で聴いても
まったく怖くないということがわかった。
恐怖感は、表情や声色、その場の雰囲気などに起因するものなのだ。

そして第一部のラストは、Mr.Children。
ミスチルのライブは2007年9月9日の横浜国際競技場以来で、
じつに10年ぶりであった。
過去の記録を紐解くと、今回が11回目になる。
桜井くんはスガの友達で、お互いに影響を受け合ったりしているそうだ。
そんな桜井くんはスガのコスプレで登場して、会場を沸かせる。
「fanfare」「跳べ」「Tomorrow never knows」「終わりなき旅」など、
最近まったく聴いていないわたしもよく知っている
(しかもフルコーラス歌える)曲ばかりやるので、思わずテンションが上がる。
終盤でスガを呼び込んで、「ファスナー」を! やるのか!
いや、鼻息荒くなりました。
スガっぽくて、だけどはっきりとミスチルの音楽で、すばらしかったです。

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メインはやはり第二部で、スガ出ずっぱり、
濃密なメンバーが入れ替わり立ち替わりの
めくるめくパフォーマンスが繰り広げられた。
まずは、ハウスバンドkokuaの「夢のゴール」。
さすがの安定感。ぴたりと耳に吸い付くような演奏が心地よい。

Progress

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  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
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そして、SKY-HIが登場。っていっても
知らない人だったんだけど、ラップが上手だね。
比較的、年齢層の高いアーティストたちのなかで唯一、
はつらつとしたパフォーマンスが新鮮だった。



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お次は、スガンプーユなるユニット。
メンバーは、スガ、山村隆太(flumpool)、高橋優。
正直言って、スガ以外のメンバーはあまり好みでなく、
どうなんだろうかと思ったが、意外に良かったです。
歌はいまいちなので、ハモるとちょっと微妙だけれど、
ギター3本の演奏はなかなか良いものだった。
福山雅治の「家族になろうよ」をカバーしたくだりには、
ちょっとほろりとしました。
この曲が今回のイベント全体を象徴しているようで、感慨深い。
フェスの出演者全員が今後、
スガのファミリーとなっていくような予感をさせたのだ。

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そして、紅一点の水樹奈々。
わたしの周りはどうやら彼女のファンだらけだったらしく、
異常な盛り上がりを見せていた。声優のファンは熱いぜ。
独特の振りなどがあって、そんな彼らを観ているのも楽しかった。
しかし、水樹奈々の歌唱力、声量には圧倒的で、
一瞬で会場全体を制してしまう。本当にすごい。
全身に彼女の思いを浴びたようだった。

タイトル未定 劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのはReflection」主題歌

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その次はスガのお友達バンド、ポルノグラフィティなんだが、
わりと盛り上がっていたのだけど、まったく興味ないので、一歩ひいて観戦。
スガの楽曲のメドレーは面白かったけれどね。

そしてイベントのラストを飾るのはもちろん、スガシカオだ。
セットリストは、以下の通り。
・アイタイ
・Real Face
・ドキドキしちゃう
・91時91分
・アストライド
・奇跡
・Re:You
・19才
・したくてたまらない

ライブのど定番ばかりをもってきた。これは、テンション上がるね!
アップテンポなナンバーのなかに、「アストライド」を差し込むあたり、
スガの20年のキャリアに裏打ちされた自信を感じる。
今日ここまで来られた自分のすべてを出し切る覚悟、
そしてそれを見守ってほしいという願いが混ざったようなメッセージが伝わる。
ラストの「したくてたまらない」では、アリーナの外周を人力車で回る。
アリーナ後方の右端にいたので、30センチの距離で観たったよ!

そして本当のラストには、
出演者全員がステージに上がり、スガの20周年を祝う。
最後までみんな残っていたことに驚き、感動した。
さらには、スガの感謝の言葉に胸がつまる。
一度はメジャーレーベルから外れインディーズとなったけれど、
再びメジャーシーンへ上がってきて、今ここにいること。
今まで支えてきてくれた人たちに恩返しをしたいということ。
そんな言葉を聴いて、デビュー以来20年、
聴き続けてきてよかったな、と思う。

音楽なんて世の中にあまたあるし、そのなかで
好きな音楽を見つけて移ろうのも自由だ。
わたしも実際スガだけを聴いているわけではないし、
むしろスガ以外の音楽を聴いている時間のほうが圧倒的に多いけれど、
やはり、彼の音楽が好きだとあらためて感じた。
独特な世界観、歌詞とトラックのバランス、歌声も好きだ。
そういえば、さいきんスガの歌は驚くほどクリアになってきた。
一時期のガサガサしたシャウトはほとんどない。
歌自体をきちんと聞かせてくれるのは、何よりもうれしいものだ。

大きな会場で大勢と盛り上がるのは楽しい。
だけれど、小さなハコでぐらんぐらん揺れるような濃密なライブが好きだ。
今後はどんなステージを見せてくれるんだろうか。
いや、その前にチケットとれるのか? 争奪戦を勝ち抜くべく、頑張ろう。


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連休文化活動 [アート]

「横尾忠則 HANGA JUNGLE」
2017/4/22(土)〜6/18(日)
町田市立国際版画美術館


20代のころ6年ほど町田に住んだことがあって、
当時はぽっかり時間が空くと、
ピクニックがてらこの美術館によく行った。
広々とした公園の中というロケーション、
駅から歩いて行けるアクセスの良さもあり、比較的訪れやすい場所だ。
さらには版画に特化した美術館という珍しさもあり、
郊外の美術館にしては来館者が多いのではないだろうか。

今回の展示は、多種多様な約250点の「HANGA」を通して
横尾忠則の創作活動の全貌に迫る。

わたしが横尾忠則の作品を意識してみるようになったきっかけは、
20代のころよく観に行った唐十郎の芝居だ。
もともと60年代のカルチャーが好きだったところに、
先輩に誘われて観に行った赤テントの芝居が
衝撃的に面白くて、その後も何度か訪れた。
その唐十郎の芝居のポスターなどを手がけていたのが横尾忠則だったのだ。
当時すでに有名なアーティストで、その活動を追うと、
思いもかけない方向へ導かれていくような怪しさにグッと興味をひかれた。
さらには文章も魅力的で、横尾の多才さを敬愛してやまない。

さて、横尾の作品といえば代表的なものはやはり芝居のポスターなどで、
ヴィヴィッドな色合いで目を引くものが多い。
その多くはシルクスクリーンだが、
木版やリトグラフもあり、それぞれの特色に合わせて
モチーフを選んでいる点が興味深い。
たとえば、東海道五十三次に材を取った作品には
木版を使い、やわらかな味わいを醸し出している。

グラフィックデザイナーとして活躍した後、
1982年に「画家宣言」をするが、それでもなお
自身の作家活動と並行してコマーシャルアートも多く手がけた。
元々、グラフィック出身ということもあり、
構成、色使いともひじょうに巧みである。
コマーシャルアートの場においても、その枠のなかで
ファインアートを実践する試みを全身で楽しんでいる印象を受ける。
制限があるなかで表現の可能性を試すといったたくらみに満ちていて、
どの作品も、独自の世界観がちりばめられている。
加えていえば、40年以上前の作品もまったく色あせることなく、
現代のアートといってもなんら違和感のないことに驚いてしまう。

作品群に一貫するのは、実験的なスタイルだ。
横尾の芸術に対する姿勢のぶれなさに感嘆した。

<町田市立国際版画美術館ホームページ>
http://hanga-museum.jp/


………………………

そして、町田に行った理由はもう一つあった。


「本の雑誌 厄よけ展」
2017/4/22(土)~6/25(日)
町田市民文学館ことばらんど
※観覧無料

1976年の創刊から42年を迎えた
『本の雑誌』の軌跡を振り返る初めての大回顧展である。
個人的なことをいえば、
『本の雑誌』、そして椎名誠との出会いが
編集とライティングの仕事を選ぶきっかけとなった。
そんなこともあり、今回の展示は自身の原点にかえる意味もあって
ひじょうに興味深かった。
初期から最新号までずらりと並ぶ表紙を見て、
「この号、よく覚えてる!」と思ったり、その変遷にしみじみしたり。
また『本の雑誌』の前身である手書きの同人誌などは
本当によくできていて、しかもどれも
作り手が楽しんでいることが伝わってきて、
紙媒体の魅力をあらためて知ることとなった。
さらには、先ごろ若くして亡くなった吉野朔美さんの
原画の展示を観て、吉野さんに教わったことの多さをかみしめる。

『本の雑誌』で紹介された本や執筆していた方々の存在、
本誌を通して得た出版活動全般にかかわる情報などが
今の自分の中心をつくってくれたのだと思う。

今回の展示に際して歴代の執筆者から寄せられたコメントもまた、
さまざまな思いが込められていて見ごたえがあった。

最近はあまりじっくり読む時間が取れなくなってしまったが、
なくなったら大変困るので、今後も
地道に読み続けていこうと思っている。

<本の雑誌ホームページ>
http://www.webdoku.jp/

<町田市ホームページ>
https://www.city.machida.tokyo.jp/


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「草間彌生 わが永遠の魂」 [アート]


「草間彌生 わが永遠の魂」
2017/2/22(水)~5/22(月)
国立新美術館


ここ数年は、アウトサイダーアートに関心があって、
2014年には近江八幡で行われた「アール・ブリュット☆アート☆日本」
にも訪れたのだった。

なぜアウトサイダーアートもしくはアール・ブリュットに
興味を持ったのかは、長くなるので過去のエントリを参照していただきたい。
草間彌生に関しても、アウトサイダーアートの人というイメージがあったのだが、
今回の展示を観て、そのイメージは凌駕された。
精神のバランスをとるために描いただけとは思えない。
彼女自身、確信をもって自身の作品をアートと認識している。

今回は、草間彌生の芸術活動全般を余すところなく伝える充実の展示だ。
前衛芸術家という言葉ではくくり切れない彼女の創作の魅力にふれることができた。

会場を入るといきなり、彌生ワールドが広がる。
2009年から取り組んでいるという大型絵画シリーズ「わが永遠の魂」が
隙間なく展示されためくるめく空間。
作品群はひとつとして同じものがなく、多様性に驚く。と同時に、
ものすごい熱量に圧倒されてしまう。
ほとばしる創作意欲を止められない。
そんな切実な思いがダイレクトに伝わって、なぜかしら泣きたくなるのだ。
無数の目、人の横顔といったモチーフの洪水に酔う。
少し離れてみれば、それが感情に任せて描いたものではなく、
細かに計算を尽くして描かれたものだということが分かる。
補色を意識したインパクトのある作品、
柔らかな色合いでやさしく寄り添う作品などをみるにつけ、
彼女の心にじかに触れたように感じた。
人のために描く作品ではなく、自分のために描く作品は
閉じているようにみえるが、そうした作品こそが
人の心に届き、共感を得るものだ。

個人的には、初期作品が特に心に残った。
デッサン力、色の選び方、構成力、
どれをとってもすばらしく練れていて
完成度が非常に高い。
加えて、模索している心情を如実に映していて、とても愛しい。

また、ニューヨーク時代に描かれたという
キャンバス全体に点を打った作品群も興味深かった。
一見、ただ点を描いただけに見えるが、ずっと観ていると
そのうねりが見えてきて、感情の動きのように思えてくる。

現代アートといえばわかりづらいといって敬遠する向きもあると思うが、
感情の発露としてみれば、非常に自然なものだ。
前衛芸術を追求すればするほど、
巡り巡って原始に還るのではないかと感じた。
ポップな見た目と相反して、揺れ動く心情を映す。
そうした草間彌生の画業を見るにつけ、
人は何のために生きるのか、という問いに還る。
kabocha.jpg
六本木の夜に怪しく光る巨大かぼちゃ

<展覧会ホームページ>
http://kusama2017.jp/




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『明るい夜に出かけて』 [本]

『明るい夜に出かけて』 佐藤多佳子 著


本作を知ったのは、やはり
FMヨコハマの「books A to Z」で、
金沢八景という言葉に、!となり、絶対に読まなきゃ、と思ったのでした。

物心ついたころから中学2年の終わりまで、
最寄りの駅は金沢文庫だった。
卒業した小学校は八景小学校だったし、遠足や地域の行事で
野島公園によく行った。
そして、ラジオの深夜放送になじんだのも、その頃。
小学校高学年のころからオールナイトニッポンや
文化放送の「天才秀才バカ」などなどをよく聴いていた。
また、20代で深夜残業をよくしていた頃、
帰宅の途中に見えるコンビニのあかりはとてもありがたかった。
遅い食事にありつけるだけではなく、
深夜に買い物をできるということに楽しみを見出したものだった。

そんな、愛するものたちに材を取った
敬愛する佐藤多佳子さんの作品が面白くないわけがない。
読んでみれば、その予想は外れることがなく、
何度も胸をきゅっとつかまれちゃったのだ。

主人公は、大学を休学してコンビニでアルバイトしている。
深夜のラジオ、アルコ&ピースのオールナイトニッポンを聴くことを
毎週の楽しみにしていた。
そんなある日、ひょんなことから同じ番組のリスナーと知り合う。
女子高生の佐古田はぼさぼさの髪にピンクのジャージで
深夜のコンビニに現れた。
コミュニケーションを苦手とする主人公は、
強烈なキャラの佐古田、コンビニの同僚でミュージシャンの鹿沢、
友人の永川たちとの交流を通して、しだいに友情を確かめていく。
まぎれもない青春小説である。
こうした出会いは、若いときの宝物だ。
みずみずしくて、せつなくて、だけどウエットな雰囲気がないのは
舞台である海沿いの街の陽気さゆえだろうか。

テンポの良い会話やSNSを駆使したコミュニケーション、
ニコニコ動画など、現代ならではのツールには今日的な感じがあるが、
根本をたどれば、若者のアイデンティティクライシスや
ディスコミュニケーションからの脱出といった普遍的なテーマが見てとれる。
人間関係で悩んだとき、救いとなるのはやはり人間なのだ、という
当たり前だけど忘れがちなことを思い出させてくれた。

深夜、という濃密な時間帯が効いている。
暗く沈み、しずまりかえったときにこそ、
吐き出せる本音はすくなくないだろう。
そうした言葉は、人の胸を打つ。

著者の作品に登場する人物たちは、どうしてこれほど魅力的なのだろうか。
せりふを発する声色までもが難なく想像できて、
彼らの会話に耳を傾けるほどにワクワクしてくる。

映像化したら……とふと思わせる。
と同時に、大切に守っていきたいと感じる小説だ。
個人的にはとても懐かしく、悩ましき時代を思い出させてくれた。


明るい夜に出かけて

明るい夜に出かけて

  • 作者: 佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 単行本



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『清冽』 [本]


『清冽』詩人茨木のり子の肖像
後藤正治 著

昨年あまりにも読んだ本がすくなく、
ブログの更新も怠ったため、ことしはもうちっと
頻繁に本の記事を書こうと思ったのだが、
すでに前回のエントリから1カ月以上空いてしまった。反省。
というわけで、ことしの読書記事、一発目です。

…………………………

茨木のり子という詩人が好きなことは、
以前に世田谷文学館での展示を観に行った際に書いた
(リンクは本ブログ内の記事)

茨木のり子は、戦後を代表する女性詩人として知られる。
「倚りかからず」「わたしが一番きれいだったとき」
「自分の感受性くらい」といった代表作を
国語の教科書で読んだことがある人もすくなくないだろう。

重複するが、わたしが彼女の作品をきちんと読んだのは、
遺作となった『歳月』のブックレビューを書いたときが初めてで、
美しくてしなやか、だけどゆるぎない言葉に衝撃を受け、
たちまち魅了されたのだった。

それからは、折に触れて彼女の詩を読んだり、
ていねいな暮らしぶりがうかがえる
写真集『茨木のり子の家』を眺めたりしている。

本作は、ノンフィクション作家の後藤正治の手による。
茨木のり子の追悼に際して文章を書いたことをきっかけに
彼女の読者となり、その生涯を追ってみたいという思いから
評伝を試みたという。

長きにわたり交流のあった編集者、
甥であり『歳月』を編纂した宮崎治氏、
彼女の実家であった宮崎医院のお手伝いさんたちの談話、
あるいは詩人仲間の谷川俊太郎や岸田衿子らのことばから
茨木のり子の生涯、そして詩作の背景をひもといていく。

彼女の人柄を形容するのにふさわしい言葉は、“品格”であろうか。
岸田衿子、谷川俊太郎とも彼女の行儀のよさに言及している。
谷川は、加えて
「…(略)…僕の言い方でいえば言葉を生み出す源の無意識下がきれい過ぎる。そこが物足りない」
と言い、茨木が夫・安信氏との日々をつづった遺作『歳月』を
「無意識下を解放した」として高く評価したそうだ。

しかし、無意識に潜む弱みや愚痴などを
作品として表していなければ強い人間というわけではない。
むしろ、つねに自身の弱さと闘ってきた結果といえるのではないか。
というのは、彼女の詩作の背景に
重くのしかかるのは、戦争体験だからだ。
少女のころは第二次世界大戦中で、
何事もがまんしなければならない時代だった。
敗戦を迎え、彼女のなかで大きく育っていった戦争への疑問が
彼女の表現活動、ひいては日々の生活の骨格となっていったのだと思う。
そうした経緯を思うと、それでも前を向いて生きてきた
彼女のひたむきさに胸を打たれる。
読むほどに、一つひとつの言葉の重みを感じるのだ。

わたしはどこかで、茨木のり子を人生の手本のように思っている。
詩作そのものだけではなく、
シンプルだけど地味にならない美しさ、
ゆるぎない精神性、きめ細やかな暮らしぶりな、
彼女をかたちづくるすべてのものにあこがれを感じる。

もし今の時代に生きていれば、
話してみたかった、そう思わせる人である。
きっとこれからも彼女の存在を心の片隅に
感じ続けることになるのだと思う。

清冽―詩人茨木のり子の肖像

清冽―詩人茨木のり子の肖像

  • 作者: 後藤 正治
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本



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